人魚姫 人魚姫


海の底で静かに眠る
紅い鱗の人魚姫
流れ流され沖にあげられ
目蓋を開ければ闇の中
月の灯りに照らされていて

光沢を放つ鱗は静かに剥がれ落ち
帰る場所など何処にも無かった
泳いでいたのはとうの昔で
どれだけ眠っていたのだろう

街には顔の無い行列が
何処までも遠く続いていて
目的地も無いままに
ただひたすらに進んでいました

あれだけ冷たく感じた風も
あれ程ほしてた水さえも
今はもう遠くに浮かぶ泡ぶくの様

硝子の破片を踏まぬように
丈夫な靴を仕立て上げては
何度壊してきたのだろう

ドレスに袖を通したその日に
娘は静かに消えていったの
分離してゆく細胞は
やがて溶けてカタチを無くし…